Share

第47話 実は常連だった

last update publish date: 2026-10-12 06:00:56

「……真人さん」

「うん?」

「私、ひとつ気になることがあるの」

「なに?」

「サトさん――さっきの店員さんなら、花菱さんのことを知ってるかもしれない」

 真人さんが少し考える。

「そうか。花菱が本当に初めて来たのか、確認できるかもしれないね」

「うん。聞いてみてもいいかな?」

「もちろん。僕も一緒に行くよ」

 私たちは、もう一度リトックへ戻ることにした。

 店の外から中を覗く。

 花菱さんの姿は……ない。

 よかった。

 ほっと胸を撫で下ろしていると、サトさんが私たちに気づいて手を振ってくれた。

「あら、相沢さん! お忘れ物ですか?」

「あ、いえ。ちょっと聞きたいことがあって……」

「はい、なんでしょう?」

 私は少し迷った。

 こんなことを聞いたら、変に思われないかな?

 で
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • ストーカーに殺された私、死に戻って冷徹社長の偽装妻になったら、娘ごと溺愛されています   第72話 助けて、真人さん!!

     その言葉を聞いた瞬間、全身から血の気が引いた。『これで、ようやく家族になれるね』 この言葉、忘れるはずがない。 だってこれは――前の人生で、私を殺した男が口にした言葉だから。 あの日、男は私の首を絞めながら、確かにそう言った。 苦しくて、息ができなくて。 必死に男の腕を掴んだけれど、振りほどくことができなかった。 視界が暗くなっていく中、最後に聞こえたのが、あの言葉だった。 嘘。 やっぱり、田原さんがストーカーだったんだ……!!「……相沢さん?」 田原さんが、私の顔を覗き込んだ。「どうしたの? そんなに驚いて」 私は反射的に後ずさった。「こ、来ないでください!」「え?」「それ以上、近づかないで!」 思っていた以上に大きな声が出た。田原さんが、ぎょっとした顔をする。「な、なんだよ。俺はただ……」「やめて!」 怖い。 怖い、怖い、怖い! あの日の記憶が、次々と蘇ってくる。 首に食い込む指。 耳元で聞こえた荒い息遣い。 顔は覆面をしていたからわからなかったけれど、はっきりと聞いたセリフは今も覚えているし、忘れたりしない!! 間違いない。この人だ。 私を殺したのは、この人なんだ! これから私は、この人に殺されるんだ!!「……相沢さん、落ち着いてよ」 田原さんが、困ったように笑った。「俺、そんなに変なこと言った?」「……っ」「だって、俺

  • ストーカーに殺された私、死に戻って冷徹社長の偽装妻になったら、娘ごと溺愛されています   第71話 田原、接近する

     それから何事もなく過ぎた。不審なメッセージも届かない。 誰かに尾行されることもない。会社でも、特に変わったことは起こらなかった。 朝は真人さんと一緒に陽奈を保育園へ送り、仕事へ向かう。 夕方は陽奈を迎えに行き、三人で夕食を食べる。 夜は陽奈がもかちゃんを抱きしめて眠り、私は真人さんと他愛のない話をする。 こんな日が、ずっと続けばいいのに。そう思うほど、穏やかな毎日だった。 平和な日々が続くにつれて、私は少しずつ油断していたのかもしれない―― 金曜日の午後。私はコピー機の前で、会議資料を揃えていた。明日は、陽奈と一緒にホットケーキを作る約束をしている。 真人さん、喜んでくれるかな。 陽奈は今朝も「ほっとけーき、つくる!」と張り切っていた。 ふふっ。材料は帰りに買いにいかなくちゃ。「……相沢さん」「はい?」 突然声をかけられ、振り返った。そこに立っていたのは、田原さんだった。 相変わらず気持ち悪い。ニタニタ笑っていて、見られるだけでぞっとしてしまう。会わないように気を付けていたのになぁ……。「あっ、田原さん。お疲れさまです」「お疲れさま。最近元気そうだね」「ええ。おかげさまで」「そう。よかった」 肩でも触られそうな雰囲気だったので、私は会釈して去ろうとしたが、前方を田原さんに塞がれてしまった。回り込まれた形になっている。「ところで、相沢さん」「はい?」「社長と付き合ってるって、本当?」 いきなり聞いてくるの!? 私は思わずコピー用紙を落としそうになった。「え、ええ……まあ」「へえ。本当なんだ」 田原さんが、じっ

  • ストーカーに殺された私、死に戻って冷徹社長の偽装妻になったら、娘ごと溺愛されています   第70話 真人の優しさ

     陽奈がもかちゃんを連れて子ども部屋へ遊びに行ったあと、真人さんが私を呼んだ。「葵さん。さっきの話なんだけど」「……うん」 私は真人さんの隣に座った。「警察から、もかちゃんの検査結果について連絡があったんだ」 思わず身体が強張る。「どうだったの?」「リトックで買ったウェディングもかちゃんからは、カメラは見つからなかったそうだよ」「……え?」 私は目を丸くした。「……本当に?」「うん。内部も調べてもらったけど、不審な機器はなかったって」「……そっか」 よかった。 あのもかちゃんには、何も仕掛けられていなかったんだ。 そう思うと安堵した。「じゃあ、犯人は、カメラで見ていたわけじゃないのね」「少なくとも、あのぬいぐるみを通して見ていたわけではないよ。お店で買ったばかりのものだし、カメラを仕込むなんてできないから」 真人さんが頷いた。「でも、そうなると……」 私は唇を噛んだ。 新しいもかちゃんを買ったことを、どうして犯人は知っていたんだろう。 あの時は、リトックで花菱さんに会った。そして、花菱さんは神田君と話したって言ってる。 もかちゃんを買ったことを知っているのは、あの2人。 候補に挙がっている田原さんは違う。「……葵さん」 真人さんが私の手を握った。「また、何か考えてる?」「……うん」 私は正直に頷いた。「どうして犯人が新しいもかちゃんのことを知っていたのか、気になって。田原さんは知らないなら、彼はストーカーじゃないのかなって、考えていたの」「そうだね」 真人さ

  • ストーカーに殺された私、死に戻って冷徹社長の偽装妻になったら、娘ごと溺愛されています   第69話 もかちゃんが帰ってきた

    「ごちそうさまでした!」 陽奈が元気よく手を合わせた。「ごちそうさま。陽奈ちゃん、いっぱい食べたね」「うん! おなか、ぽんぽん!」 陽奈がお腹をさすってみせると、真人さんが楽しそうに笑った。「本当だ。いっぱいになったね」「しゃちょーさんも、ぽんぽん?」「僕もお腹いっぱいだよ」「いっしょ!」 ふふっ。なんでも一緒が嬉しいんだから。「じゃあ、陽奈。ママとお片付けしようか」「はーい!」 立ち上がろうとすると、真人さんが私の手をそっと押さえた。「葵さん、片付けは僕がするよ」「えっ? でも……」「今日は美味しいグラタンを作ってもらったからね。お礼をさせて」「そんな、真人さんだってサラダを作ってくれたじゃない」「じゃあ、二人で片付けようか」「ええ、そうしましょう」 結局、二人でキッチンに立つことになった。 真人さんが洗ってくれた食器を、私が拭いて片付ける。すぐ隣にいるから、時々肩が触れてしまう。 そのたびに、妙に意識してしまって……。 もう! さっき、自分の気持ちに気づいたばかりなのに。これからどうやって、普通に接すればいいのよ!「葵さん?」「は、はいっ!」「どうしたの?」「な、なんでもない!」 真人さんが不思議そうに首を傾げる。「顔が赤いけど、暑い?」「だ、大丈夫!」「そっか」 真人さんが微笑んだ。「無理しないでね」 ああ、もう! 好きだって自覚した途端、こんなに意識しちゃうなんて! 私は慌てて食器を棚に戻した。「そうだ、葵さん。明日、陽奈ちゃんに渡したいもの

  • ストーカーに殺された私、死に戻って冷徹社長の偽装妻になったら、娘ごと溺愛されています   第68話 真人さんが好き

     買い物を終えて帰宅すると、さっそく夕飯の準備を始めた。 私はキッチンでグラタンを作り、真人さんと陽奈は隣でサラダ作り。「陽奈ちゃん、このレタスを小さくちぎってくれる?」「はーい!」 陽奈が一生懸命レタスをちぎる。「こんくらい?」「うん。上手だね」「えへへ!」 真人さんが褒めるたびに、陽奈の顔が嬉しそうに輝く。「しゃちょーさん! つぎは?」「じゃあ、このミニトマトをお皿に並べてくれる?」「うん!」 陽奈が真剣な顔でトマトを並べ始めた。まるで、小さな料理人さんみたいね。「葵さん」「はい?」「陽奈ちゃん、すごく上手だね」「そうでしょう? 最近、お手伝いが大好きなんです」「そっか」 真人さんが嬉しそうに笑う。「じゃあ、これからも一緒に料理してもらおうかな」 これからも――その言葉に、胸がきゅっとなる。真人さんは、当たり前のように未来の話をしてくれる。明日も、来週も、その先も、私たちが一緒にいることを、当然のように。 嬉しいけれど、その優しさに甘えすぎたら、いつか離れられなくなってしまいそうで怖いな。「ママー!」 陽奈の声に、はっとする。「なあに?」「みてー!」 振り返ると、陽奈が得意げにサラダのお皿を持ち上げようとしていた。「あっ、陽奈! お皿は置いておいてね!」「はーい!」 真人さんがすぐに手を添える。「陽奈ちゃん、僕が運ぶよ」「うん!」 本当に、息がぴったりなふたりね。思わず笑ってしまった。 さあ、こっちのグラタンの様子はどうかな? オーブンからグラタンを取り出すと、陽奈が歓声を上げた。「わああ~! ぐつぐつしてる!」「熱いから、触っちゃだめだよ」「はー

  • ストーカーに殺された私、死に戻って冷徹社長の偽装妻になったら、娘ごと溺愛されています   第67話 幸せの家族

     スーパーに到着すると、陽奈は子ども用の小さなカートを見つけて大喜びした。「ママ! ひな、これ!」「いいよ。でも、ゆっくり押してね」「はーい!」 陽奈が張り切ってカートを押し始める。その後ろを、真人さんがゆっくり歩いた。「陽奈ちゃん、今日は何を買うんだっけ?」「ぐらたん!」「そうだね。じゃあ、材料を探しに行こうか」「えび!」「うん。海老も必要だね」 真人さんが笑う。「それから、マカロニとチーズも」「ちーず!」「陽奈ちゃん、チーズはたっぷりがいいんだよね?」「うん! いーっぱい!」 陽奈が両手を広げる。「こーんなに!」「それはすごい量だね」 真人さんが真面目な顔で頷く。「じゃあ、チーズ売り場で一番大きいのを探して、たくさん買わないと」「真人さん! たくさん買ったらチーズだらけのグラタンになっちゃうわ」「それも美味しそうだけどね」「もうっ!」 私が笑うと、真人さんも嬉しそうに笑った。 なんだろう。こんなに楽しい買い物、久しぶりかもしれない。 食材を選ぶだけなのに、陽奈がはしゃいで、真人さんが笑って、私もつられて笑ってしまう。これって、まるで本物の家族みたい。「葵さん?」「えっ?」「どうしたの?」「あ、ううん。なんでもない」 慌てて首を振る。すると、真人さんがそっと私の手を握った。「……疲れた?」「ううん。大丈夫」「そっか」 真人さんが微笑む。「じゃあ、もう少しだけ付き合ってね」「……え?」「僕、葵さんとこうして買い物するの、好きなんだ」「…

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status